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塚本晋也「悪夢探偵」:人の夢の中に入る男



塚本晋也の2007年の映画「悪夢探偵」は、あいかわらず塚本らしい人を食った映画である。人の心の中に入る能力を持った男が、次々と人の心を操作して自殺をさせる。しかも自分の体を刃物で切り刻み、血みどろになって息絶えるといった陰惨な死に方だ。もう一人、人の夢の中に入る能力を持った男がいて、その男が別の人物の夢の中で、その人物の心に忍び込んできた例の男と対決する、というような内容だ。人の夢の中に入る男を松田龍平(優作の息子)が演じ、人の心の中に入る男を塚本自身が演じている。塚本の悪趣味を思わせる。

映画は、奇妙な死体の捜査を担当することとなった女刑事を主人公に展開する。HITOMI演じるその女刑事は、警視庁のエリートだったが、現場を経験したくて一警察署に転勤してきたのだった。最初に若い女性の不審な死体を見て、ほかの刑事はただの自殺だと判断したのだが、彼女は割り切れない思いを抱く。続いて同じような陰惨な死体を見て、疑念はますます深まる。そうするうちに、もしかして死んだ人たちは、他の人物に心を操作されていたのではないかと推測する。死んだ人々の携帯電話の記録に、同一人物との会話記録があったりしたからだ。

一方、彼女は、人の夢の中に入る能力を持つという男の話を聞く。そこで、その男とあい、第三の被害者たるべき人の夢の中にはいり、その謎の男とあってくれないかと依頼する。男はいやな顔をするが、女刑事はあきらめない。そのうちに、自分の仲間の刑事が、新たな餌食とされていることに気づき、なおいっそう強く依頼する。結局仲間の刑事は自殺してしまうのだが、次は自分自身が標的になる。彼女が標的となっては、夢の中に入る男も黙ってはいられない。ついに彼女の夢の中に入っていって、その謎の男と対決するのだ。

その対決に夢の男は勝つ。心の男は、夢の中で死ぬ前に、現実の世界で死ぬのである。こうして謎の呪縛から解放された女刑事は、夢の男の傷が回復するのをまち、食事に誘う。どうやら彼女は、この若くてハンサムな男にいかれてしまったようなのだ。

こんな具合に、実に人を食った映画である。だが、それなりに面白いのは、塚本のエンタメ精神の賜物だろう。




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