壺齋散人の 映画探検
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ノルウェーの映画 代表作の解説と批評


ノルウェーの映画は、21世紀に入って世界的に注目される作品を送り出すようになった。もっともノルウェーらしさを感じさせるのは「キング・オブ・トロール」(2018)だ。これはトロール伝説をテーマにしたもの。トロール伝説は北欧に共通した伝説のようだ。というのも、ドイツ人のハイネもトロールをテーマにした長編詩を書いているからだ。ハイネのトロールは善玉だったが、この映画の中のトロールは、姫をさらった獰猛な生き物である。その獰猛な生き物に若い者が挑むという話で、若者のイメージには、ノルウェーで人気のあるアスケラッデンのおとぎ話を組み合わせている。

同年(2018)年の映画「ウトヤ島」。これは2011年に起きた右翼の連続テロ事件を描いたもの。このテロはたったひとりで実施され、しかも二か所にわけて行われた。合わせて77人の死者と300人以上の負傷者を出した。ウトヤ島だけで69人が死んでいる。そのほとんどは、島でキャンプをはっていた若者である。

ノルウェーは北欧の国家ということもあり、スウェーデンを強く意識している。映画にもスウェーデンへの意識を感じさせるものがある。「ザ・ハント ナチスに狙われた男」(2017)は、対独レジスタンスに参加するノルウェー人が、ナチスに追われてスウェーデンに逃げ込む話だ。当時スウェーデンは中立を守っていたので、ナチスの手は及ばず、イギリスに味方したノルウェーとは違って安全だったのだ。

「キッチン・ストーリー」(2002)は、スウェーデン人が行った商業目的の実験に、ノルウェー人が被験者として扱われるという設定。ノルウェー人はスウェーデン人に都合よく利用される存在として描かれている。

青春を描いた作品にもノルウェーらしさを感じさせるものはある。「アルマの恋愛願望」は、早熟な少女の性衝動を描いたものだが、ノルウェー人は大柄で発達も早いので、わずか15歳で色きちがいのような性行動をとる、とうふうに思わせる作品である。一方、少年がバレーにあこがれるさまを描いた作品もある。「バレーボーイズ」(2014)がそれだ。ノルウェーにはバレーボールの養成校があって、バレー好きの少年はそこで教育を受けるのである。

なお、ノルウェー映画を代表する監督として、デンマーク出身のヨアキム・トリアーがいる。「オスロ三部作」などの話題作を作っている。

ここではそんなノルウェー映画の代表的な作品を取り上げ、鑑賞しながら適宜解説・批評を加えたい。


ノルウェー映画「キング・オブ・トロール勇者と山の巨神」 トロール伝説

ノルウェー映画「ウトヤ島、7月22日」 右翼のテロ事件

ノルウェー映画「ザ・ハント ナチスに狙われた男」:ノルウェー人の対独抵抗運動

ノルウェー映画「キッチン・ストーリー」 ノルウェー人とスウェーデン人との奇妙な関係

ノルウェー映画「15歳、アルマの恋愛妄想」:思春期の少女の性衝動

ノルウェー映画「バレエボーイズ」 プロダンサーを目指す少年たち

ノルウェー映画「母の残像」 女性の生き方




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