壺齋散人の 映画探検
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夜行列車:イェジー・カヴァレロヴィチ



イエジー・カヴァレロヴィチの1959年の映画「夜行列車」は、かれにとっての出世作であるとともに、アンジェイ・ワイダに続いて、ポーランド映画を世界に注目させた作品。ワイダの映画がいづれも高度な政治的メッセージを感じさせるのに対して、カヴァレロヴィチの映画にはそうした政治性はない。この映画「夜行列車」も、おそらくワルシャワから出発して北部の海岸へと向かう夜行列車に乗り合わせた人々の人間模様を描いている。乗客の一人が、自分はブッヘンヴァルトに四年入っていたと言うところが、唯一政治的なメッセージである。

たまたま同じコンパートメントに居合わせることになった男女を中心にして、いろいろなタイプの乗客が出てきて、それぞれの人間性をかいまみせることろを、丁寧に追っていくという構成になっている。劇的な展開はほとんどないが、ある乗客が殺人の嫌疑をうけて、警察に追われていることをめぐって一波乱ある。その波乱に、主人公役の男が巻き込まれる。容疑者と間違えられるのだ。それを同室の女が救う。その女を、若い男が追いかけてきていて、なんとか彼女の気を引こうとする。女はその若い男の愛を拒絶する。理由はわからない。

その女と、同室の男との間に、男女のほのかな愛のようなものが芽生えるかと思うや、列車は終点に到着する。執着駅には男の妻が待っており、若い女のアドベンチャーは突然終わりをむかえる、というような内容だ。

見どころは、警察の追及を逃れようとして容疑者が逃げ回るところ。列車が停止したすきに、容疑者は屋外に逃れるのだが、それを他の乗客たちが追う。まるで狩りに興じる犬たちのように。そのへんは、ポーランド人の民族性のあらわれなのだろう。日本人には、大勢の人間がとりものに熱中して、大挙して参加するというようなことは考え難い。ポーランドでは、警察が努力せずとも一般人が逮捕してくれるのである。




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