壺齋散人の 映画探検
HOME
|
ブログ本館
|
東京を描く
|
英文学
|
ブレイク詩集
|
仏文学
|
万葉集
|
プロフィール
|
掲示板
東欧の映画:名作の解説と批評
東欧諸国の映画が国際レベルに達するのは、ポーランドを除いては、1990年代以降のことである。ソ連及び東欧の社会主義体制が崩壊し、冷戦が終わって東欧諸国に自由化の波が押し寄せて以来、映画も国際的な市場の動きに乗ったわけである。
ポーランドの映画は、すでに1950年代後半には世界的な注目を浴びていた。それには、アンジェイ・ワイダとかイエジー・カヴァレロヴィチといった才能ある映画作家が現れたという事情があったが、かれらに映画製作を可能にさせたのは、ポーランドが東欧諸国の中では例外的に、自由な雰囲気に恵まれていたからだ。
アンジェイ・ワイダはポーランド映画を象徴するような映画作家だ。かれは当初、対独レジスタンスに焦点をあてた映画作りをしていたが、そのうち次第に、ポーランドの社会主義体制を批判する映画を作るようになった。対独レジスタンスも、社会主義批判も、西側の映画界にとっては親和的な話題であるから、ワイダは西側の映画界から高い評価を受けた。
それに対して、カヴァレロヴィッチやポランスキーといった作家は、あまり政治性を感じさせないような映画を作った。だが、ポランスキーは自身ユダヤ人としてゲットーを生き延びた体験があるので、それを映画にぶつけた。「戦場のピアニスト」は、ポーランドで作った作品ではないが、ポーランドで起こったユダヤ人へのホロコーストをテーマにしたものである。
ハンガリーやルーマニアでは、自由化以後高い水準の映画が作られるようになるが、やはり政治的なメッセージ性の強い作品に佳作が多いようである。ハンガリー映画「サウルの息子」はやはりナチスのホロコーストをテーマにしており、ルーマニア映画「汚れなき祈り」はチャウチェスク体制への批判を込めていると受け取られた。
冷戦後、ユーゴスラヴィアの解体に伴い、旧ユーゴ構成国の間で、激しい対立・紛争が起きた。そこで、その紛争をテーマにした映画が多く作られた。セルビアの映画作家エミール・クストリッツァはそうした民族間紛争をテーマにした映画を多く作った。クロアチア、ボスニア、マケドニアの紛争をテーマにした作品も作られた。旧ユーゴ諸国は、東欧諸国ではもっとも激しいい紛争を経験したわけで、その経験が一連の優れた映画を生みだしたといえる。
ここではそんな東欧諸国の映画の中から、名作といわれるものを取り上げ、鑑賞のうえ適宜解説・批評を加えたい。
ポーランドの映画
ロマン・ポランスキー「水の中のナイフ」:夫婦と若者の奇妙な関係
ロマン・ロマンスキー「袋小路」:監禁された夫婦
ロマン・ポランスキー「戦場のピアニスト」:ワルシャワ・ゲットーとシュピルマン
イェジー・カヴァレロヴィッチ「夜行列車」:夜行列車の中の人間模様
アニェス・ホランド「ソハの地下水道」:ホロコーストから逃れるにと人々
ポーランド映画「パプーシャの黒い瞳」:ジプシーを描く
ポーランド映画「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」:ソ連の全面否定をイギリス人にさせる
アンジェイ・ワイダの映画
アンジェイ・ワイダ「世代」:レジスタンスに身を捧げる若者たち
アンジェイ・ワイダ「地下水道」:ワルシャワ蜂起を描く
アンジェイ・ワイダ「灰とダイアモンド」:ポーランド内部の政治的対立
アンジェイ・ワイダ「大理石の男」:社会主義建設期のポーランド社会
アンジェイ・ワイダ「カティンの森」:ポーランド将校団の虐殺
アンジェイ・ワイダ「ワレサ 連帯の男」:レフ・ワレサの民主化運動
アンジェイ・ワイダ「残像」:前衛芸術家ヴワヂスワフ・ストゥシェミンスキ
チェコの映画
チェコ映画「アリス」:アリスの不思議な世界
ヤン・シュヴァンクマイエル「ファウスト」 ファウスト伝説を人形劇で
ヤン・シュヴァンクマイエル「オテサーネク妄想の子供」チェコの食人樹伝説
アニメ映画「ファンタスティック・プラネット」 架空の惑星の人類
ヤン・スヴェラーク「ダーク・ブルー」:英軍傭兵のチェコ人
チェコ・ウクライナ映画「異端の鳥」:ナチス時代のユダヤ人迫害
ハンガリーの映画
ハンガリー映画「ニーチェの馬」:世界の終末
ハンガリー映画「ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲」:動物虐待への逆襲
ハンガリー映画「サウルの息子」:強制収容所のガポを描く
ハンガリー映画「心と体と」:屠畜場を舞台にした男女の恋愛
ハンガリー映画「この世界に残されて」 ホロコーストを生き延びたものの心の傷
ルーマニアの映画
ルーマニア映画「4ヶ月、3週と2日」:女子大生の堕胎
ルーマニア映画「汚れなき祈り」:ギリシャ正教の修道院生活
ルーマニア映画「エリザのために」:娘のために必死になる父親
ルーマニア映画「私の、息子」:母子の相互依存関係
ルーマニア映画「コレクティブ 国家の嘘」:医療システムの腐敗を追求するドキュメンタリー
ルーマニア映画「アカーサ僕たちの家」:ブカレストのロマ人一家を描くドキュメンタリー
バルカン諸国(旧ユーゴスラヴィア)の映画
ネレトバの戦い:ユーゴスラビアの映画
サラエボの花:民族紛争の傷跡
ビフォア・ザ・レイン:マケドニアの民族対立を描く
灼熱:クロアチアの民族対立を描く
ノー・マンズ・ランド:ボスニア内戦を描く
アイダよ、何処へ?スレブレニツァの虐殺
エミール・クストリッツァの映画
パパは、出張中!:エミール・クストリッツァ
ジプシーのとき:エミール・クストリッツァ
アンダーグラウンド:バルカン半島現代史
黒猫・白猫:エミール・クストリッツアァ
ライフ・イズ・ミラクル:エミール・クストリッツァ
オン・ザ・ミルキー・ロード:エミール・クストリッツァ
HOME
作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2013-2015
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである