壺齋散人の 映画探検 |
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ジョン・フォードの1949年の映画「黄色いリボン(She Wore a Yellow Ribbon)」は、「騎兵隊三部作」の第二作。前作「アパッチ砦」でカスター率いる騎兵隊第七連隊が全滅したことを描いたのに続き、勝利に勇気づけられたインディアンが、騎兵隊に対して攻勢に打って出、それに対して騎兵隊が立ち向かうといった内容だ。前作同様、インディアンを一方的に悪と決めつけてはいない。一応、インディアの暴虐性を強調しているが、それは白人社会の手前をはばかってのもので、インディアンといえども人間なのだという考えは伝わってくる。 ジョン・ウェイン演じる老兵が主人公。かれは大尉として、ある砦を根拠地とする連隊の副司令官を務めている。砦には、騎兵隊員が殺害されたという報告がもたらされる。それに対して、連隊では作戦をたてる。ほかの部隊と連絡をとりながら、インディアンへの対応を図ろうというのだ。そこで、別部隊へと向かうことになるが、司令官が自分の妻子を同行させて、東部へ向かう馬車に乗せろという命令を下す。大尉は反対するが、命令だといって押し切られる。かくして大尉の率いる部隊は、母子二人の女性を護衛する羽目になる。娘は、黄色いリボンを結んでいる。どういう意味かはっきりしないが、それがこの映画のシンボルとしての役割を果たすというわけである。 インディアンは、数部族が集結して、騎兵隊との闘いにむけて気勢をあげている。正面から立ち向かったら、大きな規模の戦闘になるだろう。砦所属の商人がインディアンに武器を売りつけていることもあり、インディアン側はかなりの武装をしているようでもある。そこで大尉は、なんとか対決を避けようとして努力する。その努力が実ったかどうか、あまりはっきりとはしない。大尉は定年年齢になっており、退役することになるからだ。退役のさいの演説で、大尉は「老兵は去りゆくのみ」と語る。 というわけで、西部劇としては、抑制された作りになっている。「アパッチ砦」もそうだったが、インディアンを一方的に悪と決めつけるのではなく、同じ人間として共存できないものかと悩む人物が登場し、大きな役割を果たしている。そこにジョン・フォードの良心のようなものを感じさせられる。 なお、とかく大根呼ばわりされることの多いジョン・ウェインが、この映画ではなかなか渋い演技を見せてくれる。ウェインにとっては会心の演技だったのではないか。ウェインの相棒役の軍曹をつとめたヴィクター・マクラグレンも、なかなか心憎い演技ぶりを見せてくれる。折々流される主題曲は、映画史上に残る名曲である。 |
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