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ジョン・フォード「捜索者」:アメリカ原住民を敵視



ジョン・フォードの1956年の西部劇映画「捜索者(The Searchers)」は、フォードとしてはめずらしく思えるほど、インディアンとよばれるアメリカ原住民への偏見が表に出た作品である。この映画の中のインディアンは、無条件に滅ぼすべき悪党として描かれ、その悪党を殺す主人公は、英雄のように描かれている。「駅馬車」の中のインディアンも、白人にとって不倶戴天の敵であり、殺すのは当然だという描き方だったが、その後、いわゆる「騎兵隊三部作」では、白人とインディアンの関係は相対的な視点から描かれ、インディアンを絶対的に敵視することはなかった。ところが、この映画では、インディアンは絶対的に敵視すべきものとして描かれている。フォードがそのような描き方をした理由は、明確にはわからない。興行上の配慮だったのか。

ジョン・ウェイン演じる風来坊が、久しぶりに再会した兄の一家とくつろいでいる折、地元の自警団と共に牛泥棒の捜索に向かっている間に、兄の一家がインディアンに襲われ、兄夫婦及び長男が殺されたうえに、二人の娘が誘拐されてしまう。そこで復讐するとともに、二人の娘を取り戻すことを決意したウェインは、兄が育てた混血児をともない、捜索の旅に出る。その挙句、犯人のインディアンを見つけたはいいが、姉娘はすでに殺されており、妹のほうはインディアンの生活にすっかりなじんでしまっていた。だが、その妹を連れ帰り、自分の生活に迎え入れる、というような内容である。

ウェインがなぜ、インディアンに対する偏見をむき出しにするのか。それは、アメリカではとくに説明の必要もないということだろう。インディアンは、アメリカの白人にとって存在することすら許されないものであり、かれらを敵視したり、殺したりするのに理由はいらないからだ。

そんなわけでこの映画は、見ようによっては実にひどい人種差別映画である。或る意味、「駅馬車」よりもひどい偏見にいろどられている。フォード自身そうした偏見にとらわれているのか、あるいは、反語的な形でその偏見を批判しているのか。この映画だけからは、なかなか判断できない。

なお、この映画は、いまでは西部劇を代表する傑作として、高い評価を受けているそうだ。興行実績こそ芳しくはなかったが、「映画批評家が選ぶベストテン」でベストテン入りしたこともあり、また、「アメリカ国立フィルム登録簿」に登録された最初の作品の一つでもある。理由は西部劇の最高傑作だということだが、この映画のどこが傑作の名に値するのか、納得のいく説明はない。




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