壺齋散人の 映画探検
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ニノチカ:ソ連を皮肉るロマンス・コメディ



エルンスト・ルビッチの1939年の映画「ニノチカ(Ninotchka)」は、アメリカのコメディ映画の古典的作品である。それまで主流だったドタバタ喜劇ではなく、恋を絡ませたロマンス・コメディである。当時絶世の美女と呼ばれたグレタ・ガルボが主演し、しかも「笑わない女優」として知られていた彼女が大口をあけて笑ったというので、大評判になった。ガルボにとっては皮肉なことだったが、これが彼女の代表作となった。とはいっても、彼女は喜劇女優とはいえない。喜劇女優であるには、あまりにも美人すぎるのである。

コメディではあるが、一応テーマはある。当時アメリカにとって最大のライバルであったソ連の体制を笑いのめすことによって、アメリカの優位を世界中に訴えることであった。だが、その意図は必ずしも実現されたとはいえない。というのも、この映画の中で大口を開けて笑うのは、ソ連の女諜報員を演じるガルボなのであり、彼女が笑うと、ロシア人を笑っているのではなく、アメリカ人を笑っているように見えるからだ。

そのガルボは、ソ連の諜報員の一員として、パリにやってくる。使命は、革命のための資金稼ぎだ。そのガルボにフランスの貴族出身の優男がほれる。なんとか彼女の心をつかもうとする男の熱心さに、どういうわけかガルボは、大口をあけて笑い転げる。その口の大きさが半端ではない。地球全体を飲みこみそうな勢いである。

奮闘努力の甲斐があって、フランス男はロシア女を口説き落とことができたというのが結末だ。喜劇はハッピーエンドで終わらねばならないという定石にしたがったわけである。




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