壺齋散人の 映画探検
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アメリカ映画「タイタニック」:海難事故を描く



1997年のアメリカ映画「タイタニック」は、興行的に大成功し、アカデミー賞の多くの部門で受賞するなど、大変な評判となった作品で、日本でもヒットした。三時間を超える長編映画にかかわらず、ひとを飽きさせない工夫があるとして、評論家たちの受けもよかった。しかし今日この映画を見て、そう大した感銘を受けることがないのは、小生だけか。

1912年4月に起きた、豪華客船タイタニック号の沈没がテーマである。この沈没は、深夜に船が氷山に衝突したことがもとでおこったのだが、事故にいたる安全管理とか、事故後の救出体制がお粗末だったことから、史上最大の無責任な海難事故であるといわれている。この事故がきっかけとなって、船舶の安全管理体制とか、事故後の救出体制が、世界中で抜本的に見直されることになったといういきさつもある。そういうわけで、映画の題材としては扱いやすい。

映画は、レオナルド・ディカプリオ演じる風来坊と、ケイト・ウィンスレット演じる若い女性が、船の中で知り合って、深く愛するようになり、船が沈没する危機に直面して、ますます愛のきずなを強めるさまを描いている。ようするに、世界的な事故にまきこまれた男女が死をかけて愛を貫くという点では、手の込んだラブ・ロマンス劇である。

映画は、事故の子細をリニアな時間軸にそって描くのではなく、奇跡的に生還した一人の女性(本編の事故の時点では愛する女性、現在は百歳を超えた老婆」が八十年前の事故の模様を自分なりの視点から回想するというかたちをとっている。その回想のきっかけとなったのは、船から財宝をとりだそうというプロジェクトだった。そのプロジェクトの過程で、ダイアモンドのネックレスをつけた一人の女性の裸体画がみつかった。それがテレビで放映されると、その絵のモデルだという女性が現れて、プロジェクトのメンバーを前に、その絵が描かれた事情とか、それに関連してタイタニック号の事故の様子が、彼女なりの視点から詳細に語られる。映画は、その語りをイメージ化するという形で展開していくのである。

この映画を見ると、タイタニック号の安全管理がずさんだったこととか、事故後の救出体制がでたらめだったことがわかる。船の定員は2200人なのに、救命ボートはその半分しか乗せられず、しかも長時間の漂流を予定していないことなどだ。その結果救命ボートに乗れたのは700人だけであり、残りの1500人は難死した。難死の原因は冷たい海水による低体温症だったという。

二人の恋人のうち、女性はなんとか救命ボートに乗せられ、生き残ることができたが、男のほうは低体温症のために死んでしまう。その男を演じたディカプリオは、もともとソフトな雰囲気で人気があったが、この映画で、いっそう人気を高めた。




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