壺齋散人の 映画探検
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アメリカ映画「ブレイブハート」 スコットランドの対英独立戦争



1995年のアメリカ映画「ブレイブハート(Braveheart メル・ギブソン監督)」は、13世紀における、スコットランドの対英独立戦争を描いた作品。この時期のスコットランドに、ウィリアム・ウォレスという英雄が登場し、スコットランド人を鼓舞して対英独立戦争を戦った。その戦争のハイライトとなったスターリングの戦いは、スコットランドの歴史上、イギリス軍に勝った唯一の戦いだった。その戦いの後、イギリス側の反撃により、スコットランドの独立運動は弱体化し、指導者のウォレスは残虐なやりかたで殺された。かれの首はロンドン橋にさらされたのだったが、それはロンドン橋名物といわれるさらし首の、史上最初の出来事だったといわれる。

この映画を見ていて、イスラエル国家とガザのパレスチナ人の、現在進行中の戦いに思いをはせた。パレスチナ人も、かつてのスコットランド人と同様に、異民族国家イスラエルによって暴力的に支配されている。その専制的な支配に抗うために、ガザのパレスチナ人が立ち上がったというのが、今回の戦いの発端だ。当初はイスラエル側の打撃が大きかったが、やがて反撃に転じ、今では圧倒的な火力でガザのパレスチナ人の皆殺しに取り掛かってる。そのやり方は、ウォレスを残忍なやり方で殺したイギリス王エドワードも顔色ないほどすさまじいものである。ウォレスが殺されたように、パレスチナ人も殺されるであろう。それは、イスラエルがパレスチナに対して圧倒的な力をもっていることから当然予想されることである。だが、かつてのスコットランド人が、圧倒的に強いイギリスに抵抗したのと同じように、今回も、専制支配に反発したパレスチナ人が圧倒的に強いイスラエルに向かって抵抗したのだといえる。

監督のメル・ギブソンはアクション映画の俳優であったこともあり、この映画のようなアクション・シーンは得意なようである。かれの肉体は、スーパーマンを連想させるほど強靭なものだと伝わってくる。その強靭な肉体をフルに使って敵のイギリス人を次々と退治していく様子は、見ていて爽快である。

なお、ギブソンはオーストラリアの出身である。オーストラリアはイギリス人が作った植民地国家であり、原住民に対しては専制的に振舞った。だから、映画の中のスコットランド人とは対照的な立場にあるわけだ。しかしこの映画を見る限り、かれにオーストラリア人としての自覚があるようには感じられない。




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