壺齋散人の 映画探検
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アメリカ映画「スタンド・バイ・ミー」:少年たちのイニシエーション



ロブ・ライナーの1986年の映画「スタンド・バイ・ミー(Stand by me)」は、少年たちが経験を積んで大人になってゆく過程、すなわち「イニシエーション」をテーマにした作品。そのイニシエーションが、アメリカの壮大な自然を舞台に展開されるところが、いかにもアメリカ人好みである。非常に単純で分かりやすいので、日本人が見ても納得できるところがある。

主人公は、小学校の卒業を間近に控えた四人の少年たち。その少年たちが、数日前から行方不明になっている少年を探しに出かける。かれらは二日かけて目星をつけていた場所にたどり着き、そこで不明少年の遺体を発見する。ただそれだけのことなのだが、その過程でいろいろなことに遭遇し、それを一つ一つ乗り越えていくことで、少年らしさから脱して、一人前の人間に成長していくというものである。

その四人の少年のうちの一人が、大人になってからかつての自分たちの冒険を回想するという形で映画は展開する。その少年は、兄を事故でなくしたばかりで、両親はその死に打ちのめされてかれには関心を示す余裕がない。そこで少年は、自分は親に愛されていないと妄想するようになる。その少年の唯一の理解者といえるのは、町で不良扱いされている少年だ。かれは学校の給食費を盗んだ嫌疑で不良扱いされているのだが、じつは盗んだ金を担任の教師に返却していた。ところがその教師は、盗みの罪を少年に負わせて、その金を自分で使ってしまう。そんな大人たちの醜さに接して、その少年も社会に対して不信感を抱いているのだ。

そんな設定を踏まえて、少年たちの冒険が展開していく。その冒険の過程でいろいろなことがおきる。命の危険を感じたこともある。また、せっかく探し当てた遺体を、不良どもに横取りされる危機にも直面する。だが、かれらのとって問題は、さがした遺体の取り扱いにあるのではなく、あくまでも自分たちの生きたかに自信をつけることだった。じっさい冒険を終えた少年たちは、それぞれなりに、一皮むけたのである。




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