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ブルース・へレスフォード「ドライビングMissデージー」:人種差別を描く



ブルース・へレスフォードの1989年の映画「ドライビングMissデージー(Driving Miss Daisy)」は、アメリカ南部における人種差別を描いた作品。シリアスな作品にかかわらず、また限定公開というかたちをとったにかかわらず、大ヒットしたそうだ。

ユダヤ人の裕福な老婦人が、自動車事故を起こしたことがきっかけで、息子から黒人の運転手をあてがわれる。自分では運転するなというのである。プライドを傷つけられたこともあって、老婦人はその黒人を拒絶するのだが、黒人の人柄に心をゆるし、かれの運転する車に乗るようになる。だが、かれを自分より劣った人間と決めつけ、威圧的で差別的な態度を見せる。そんな老婦人に対して黒人運転手はねばりづよく接する。

だがある時、隣の州(アラバマ)に遠出した際に、その地の警察から威圧的な誰何をうける。そのことに老婦人は愕然とする。地元のジョージアでは、名士扱いされて差別を感じることはなかったが、自分の名が知られていない隣の州では、一介のユダヤ人でしかなく、そのユダヤ人は厳しい差別の対象なのだ。

そんなわけで老婦人は、差別という理不尽な現象に強い疑問を抱き、平等の尊さに目覚めていく、というような内容である。

タイトルのDriving Miss Daisyは、運転する婦人という意味と、婦人を操るという意味を重ねているのであろう。婦人を操っているのは、モーガン・フリーマン演じる気のいい黒人の運転手である。

黒人差別がかつてのアメリカ南部でいかにひどかったかは、途中立ち寄ったドライブインで、トイレも使わせてもらえないことに現れている。だからかれは、草むらで用を足さねばならないのである。また、老婦人に向かって、黒人がいとも簡単に木に吊るされる理不尽さについても語る。白人による黒人へのリンチは、アメリカ南部では、20世紀の半ばを過ぎてもやまなかったのである。




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