壺齋散人の 映画探検
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欲望という名の電車 アメリカ南部人気質



1951年のアメリカ映画「欲望という名の電車(A Streetcar Named Desire エリア・カザン監督)は、テネシー・ウィリアムズの同名の戯曲を映画化した作品。原作はブロードウェーで上演され大当たりをとった。小生は原作を読んでいないが、映画の脚本もウィリアムズが担当しているので、ほぼ忠実に再現しているのだと思う。

テーマは、アメリカ南部の農園主の家族が没落するさまを描くこと。その没落を、ヴィヴィアン・リー演じる長女のブランチが一身に体現する。彼女は、農園を失って行き場がなくなり、ニューオリンズで夫とともに暮す妹をたよるのだが、自分の立場がわかっておらず、周囲の人と様々なトラブルを起こしたあげく、ついには発狂して、精神病院に強制入院させられるというような内容である。

かつてのアメリカ南部ではよくあった話なのであろう。アメリカ映画には、北部の工場地帯で生きるサラリーマンをテーマにしたものと、南部のプランテーション農場を舞台にしたものとの二つの大きな潮流がある。この映画は、アメリカ南部人(といっても白人のことだが)の気質をよく描き出しているということのようだ。

見どころは、ヴィヴィアン・リーの鬼気迫る演技だ。舞台に登場した時点で、人格のほころびを感じさせるが、その綻びがやがて狂気に移行するさまが、よく描かれている。

監督のエリア・カザンは、赤狩りの時代にFBIに協力してスパイまがいのことをしたとして、すこぶる評判の悪い男だ。それでもアカデミー賞の名誉賞を授かっている。




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