壺齋散人の 映画探検
HOMEブログ本館美術批評東京を描く水彩画動物写真西洋哲学 プロフィール掲示板



アメリカ映画「彼奴は顔役だ」 怒涛の二十年代を描く



1939年のアメリカ映画「彼奴は顔役だ(The Roaring Twenties)」は、アメリカ・ギャング映画の傑作の一つ。最高のギャングスターといわれたジェームズ・キャグニーと、日本で人気のあった俳優ハンフリー・ボガートが、ギャング仲間というかたちで共演している。この二人にもう一人を加えた戦友仲間が、ギャングの世界に入っていく過程を描いている。彼らは戦場から復員してくると、自分らが邪魔もの扱いされていることに憤慨する。国のために戦ったのにかかわらずである。折しもアメリカには禁酒法が施行され、酒の製造販売が禁止される。そこでかれらは、密売で一儲けすることをたくらむ。もしかれらがアメリカ社会にもっと温かく迎えられていたら、そんなことはしなかったかもしれない。そんなメッセージが伝わってくるように作られている。ただのギャング映画とは、一味違うのである。

エディが復員後最初に訪ねたのは、戦場での文通相手の女性だった。大人の女性だと思っていた彼女はまだ十五歳の少女だった。その少女ジーンがかれの人生を彩ることになる。ともあれエディは、戦友仲間の一人で弁護士となったロイドとともに酒の密売に乗り出し大儲けする。そのうちもう一人の戦友ジョージ(ボガート)も仲間に加わる。かれらは目覚ましい活躍をし、一躍暗黒街の顔役となる。エディはジーンと結婚するつもりだが、ジーンはロイドに惚れる。それを知ったエディは、酒場の女将パナマになぐさめてもらう。

取り締まりが厳しくなって、エディは刑務所に入れられる。その間にジョージが力をつける。そのジョージとエディは因縁の対決に導かれる。今は弁護士として活躍しているロイドを、ジョージが殺そうとしていることを知ったエディが、命をかけて止めさせようとし、互いに撃ち合ってともに死ぬのである。

禁酒法の時代には、アル・カポネをはじめ、様々な人間がギャングになった。密造酒にかかわる仕事はギャングというかたちをとらざるを得なかったからである。エディのように、失業した復員兵の多くもギャングになっただろうと思える。要するに1920年代という時代の空気が、多くのギャングを生んだということだろう。原題の「怒涛の二十年代」は、そんな時代の雰囲気をよく表した言葉だ。




HOMEアメリカ映画ギャング映画









作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2013-2021
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである