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男はつらいよ寅次郎かもめ歌:寅さんシリーズ第二十六作



「男はつらいよ寅次郎かもめ歌」は、寅さんシリーズ第二十六作、公開は1980年暮。寅次郎が、若い娘に父性本能を刺激されたらしく、かいがいしく面倒をみる様子が描かれる。その寅次郎の感情には、父性本能だけではなく、かすかな性愛も含まれていたらしく、娘が結婚すると知ったときには、例の悲しそうな表情を見せるのである。

娘役を、伊藤蘭が演じている。キャンディズの一員として人気があった女性だ。この映画に出演した時には二十五歳になっていたが、まだ幼さを感じさせる。その幼さに寅さんが父性本能を刺激されるというわけだ。

死んだ仲間の墓に線香をあげるつもりで北海道の奥尻島に渡った寅次郎が、その仲間の娘の境遇に同情する。娘は一人暮らしで、こんな島を出て東京に行き、働きながら夜学の高校に通いたいという。寅さんはその娘を柴又につれてきて、近所の店でアルバイトをさせながら、定時制高校に通う段取りを整える。もっとも寅さん自身がなにもかもやったわけではなく、さくらはじめ周囲の応援を得たうえでのことだった。

娘は順調に毎日を過ごし、そんな娘に寅次郎は父親のように接していたのだったが、ある時娘の実の母親が訪ねてきたり、北海道の函館にいたころの恋人が会いにきたりする。その恋人と関係を復活させた娘は、かれと結婚して、かつ定時制高校にも通いたいという意思を表明する、というような内容である。

寅さんシリーズも回をかさね、寅さんも年をとって、自分の恋ではなく、他人の恋の後見役をやったり、父親代わりを努めたりするようになったわけである。

見せ所は、伊藤蘭演じる娘が、江刺追分を歌うところだろう。伊藤蘭は声がうわずってなかなか思うように歌えていない。そこがまた愛嬌となっている。なお、当時有名だった江差追分大会の様子も実況中継されている。そちらの歌い手はみなうまかった。


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