壺齋散人の 映画探検
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張芸謀の映画:鑑賞と批評


張芸謀(チャン・イーモウ)は現代中国映画を代表する監督である。中国映画は、長らく世界の映画市場からは孤立していたが、1980年代以降、改革開放路線の進行の中で、世界の注目を集めるような作品を送り出すようになった。その時代の中国映画を、第五世代と呼称するようだが、張芸謀は陳凱歌(チェン・カイコー)と並んで、この世代を牽引する存在である。

張芸謀の作風は、一方で政治的メッセージを込めた作品を作りつつ、他方では若い男女の純愛を描くなど、結構幅が広い。また、娯楽性に富んだ作品も手掛けており、そんなこともあって、興行的にも成功している監督である。

映画人としてのスタートでは、陳凱歌の作品「黄色い大地」の撮影監督をつとめたり、呉天明(ウー・ティエンミン)の作品「古井戸」の主演俳優をつとめたりした変わり種で、自身が最初に作った映画は「紅いコーリャン」である。これは中国人として初めてのノーベル賞作家莫言の小説を映画化したものだが、抗日戦争中における日本兵に対しての厳しい視線に貫かれたもので、日本では反日映画として受け取られている。

反日映画としては、2011年の「金陵十三釵」のほうがずっと徹底している。これは南京事件をテーマにしたもので、日本軍による集団強姦から少女たちを守るために、芸妓たちが犠牲になる話である。世界的な反響を巻き起こしたこの映画は、日本では究極の反日映画と受け取られて、上映されることはなかった。この映画の国際的な反響を意識してか、一部の日本人の間では、南京事件は中国のでっち上げだと言い張る者もいる。それほどこの映画はインパクトが強かったといえる。

そんなことから、張芸謀が徹底した反日家かといえば、そう単純なものでもなく、高倉健を主演にして、降籏康男と共同監督映画「単騎、千里を走る」を作ったりしている。これは中国人と日本人との間の心温まる交流をテーマにした作品である。前半の日本を舞台にした部分を降籏が監督し、後半の中国を舞台にした部分を張芸謀が監督した。高倉健の渋い演技が呼び物だ。その高倉の渋い演技を、中国で最初に公開された日本映画「君よ憤怒の河を渡れ」で見た張芸謀が惚れ込んで、高倉を主演にした日中合作映画を作りたいと考えたことから生まれた映画である。

男女の純愛を描いた作品としては、1999年の「初恋の来た道」と2010年の「サンザシの樹の下で」が代表的な作品。これらはいずれも文化大革命の時代を背景にしている。その時代を背景にしたものとしては1994年の作品「活きる」も上げられる。これは張芸謀の代表作といってよいもので、いかにも中国人らしさを感じさせる人間たちを描いている。

1991年の作品「紅夢」は中国の伝統芸能を、2002年の作品「HERO」は伝統武芸をそれぞれテーマにしたもので、しかも娯楽性に富んでいる。張芸謀の幅の広さを物語るものといえよう。ここではそんな張芸謀の代表的な作品を取り上げて鑑賞し、適宜批評したい。



紅いコーリャン(紅高粱):張芸謀
紅夢(大紅灯篭高高掛):張芸謀
活きる(活着):張芸謀
上海ルージュ(揺啊揺, 揺到外婆橋):張芸謀
あの子を探して(一個都不能少):張芸謀
初恋のきた道:張芸謀
HERO:張芸謀
サンザシの樹の下で(山楂樹之恋):張芸謀
金陵十三釵:張芸謀

単騎、千里を走る:日中合作映画


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