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にんじん:ジュリアン・デュヴィヴィエ



ジュリアン・デュヴィヴィエの1932年の映画「にんじん(Poil de carotte」は、ジュール・ルナールの同名の小説を映画化したもの。原作は児童向けの、いわゆる児童文学ということになっているが、それにしてはテーマが深刻であり、児童を主人公にした大人のための文学といってよい。大人の心無い振る舞いがいかに子供を傷つけるかを描くことによって、世の大人たちに反省を迫るものといえよう。

日本人の好みにあったらしく、小説も、それを戯曲化した舞台も大いに受けた。なぜかはわかならい。日本人の道徳意識に合致したからかもしれない。

普段寄宿制の学校で暮らしている少年が夏休みを家で過ごす。その少年を両親はじめまわりの者はにんじんと呼んでいる。赤毛で産毛を生やしたところがニンジンを想起させるからだろう。

家の中は少年にとって居心地がよくない。とくに母親はがみがみうるさいだけで、我が子を愛しているとは到底言えない。父親は愛しているようだが、自分のことに忙しくて子供のことまで気が回らない。そんななかで唯一の慰めは、伯父の娘マチルドと仲良くすることだ。二人は、幼いながらも結婚を誓い合った仲なのだ。

そんな少年が、さまざまな試練に直面して、ついには納屋で首吊り自殺を図るが、間一髪のところで父親に助けられる。少年の気持ちを推し量った父親は、以後少年に父親らしく接し、また少年も父親の愛を受けて、一人の人間として成長するというような内容だ。

いかにも説教めいたことろが鼻につくのだが、にもかかわらずこの作品が、日本人の大きな支持を集めたことについては、文明論的な解明が必要だろう。




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