壺齋散人の 映画探検
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市川崑の映画:作品の解説と批評


市川崑は、文学作品の映画化でよい仕事をした。非常に多作な作家で、中には凡庸な娯楽作品も多いのだが、谷崎潤一郎の小説や、大岡昇平の「野火」などを原作にして、実に心憎く演出している。派手なところはないが、堅実な映画作りに定評があった。また文芸作品以外にも、コメディタッチの映画やドキュメンタリー風の作品など、結構幅白い分野にわたる映画作りをしている。

戦後本格的な監督業を開始し、当初はあたりさわりのない風俗映画を作っていたが、1956年に、竹山道夫の児童向け文学作品「ビルマの竪琴」を映画化して以来、主に文芸作品の映画化を通じて、一流の映画作家に成長していった。「炎上」、「鍵」、「野火」といった作品は、市川崑の代表作といえるものである。

また、1964年東京オリンピックの公式記録映画は、記録映画としてのみならず、芸術的な作品としても、日本の映画史上に残る傑作である。この映画については余談がある。この映画をオリンピックの公式映画として発注した国は、映像が日本選手の活躍よりも、外国人選手の人間的な側面ばかりを取り上げていることに因縁をつけ、担当大臣だった河野一郎が、市川崑を激しく攻撃した。その時に市川の加勢を買って出たのは高峰秀子で、彼女は河野を相手に直談判に及び、この映画を公式映画として上映させることに成功したのであった。

高峰秀子が市川崑を擁護したのにはわけがある。市川がまだ鳴かず飛ばずだった頃、金のない市川は高峰の家に居候をしていた。その時以来この二人は懇意となり、市川の苦境を高峰が救ったというのである。日本映画史上の美談の一つとされている。

市川はまた、娯楽映画の分野でも成功した。1976年の「犬神家の一族」に始まるいわゆる金田一耕助シリーズはいずれもヒットした。だが内容的には、単なる娯楽映画にとどまっており、とくに批評に値するようなものはない。映画人は、興行的にも成功することがもとめられるので、市川が娯楽映画に力を入れるのはあながち批判できない。

市川崑は高齢になっても制作意欲が衰えず、さまざまな分野の映画作品に取り組んだ。その活躍は21世紀にまで及んでいる。ここではそんな市川映画の代表作を取り上げ、鑑賞の上、適宜解説・批評を加えたい。


市川崑「ビルマの竪琴」:竹山道雄の小説を映画化

市川崑「炎上」:三島由紀夫の小説を映画化


市川崑「鍵」:谷崎潤一郎の小説を映画化

市川崑「野火」:大岡昇平の小説を映画化

市川崑「ぼんち」:老舗問屋のボンボン

市川崑「おとうと」:幸田文の描く姉弟愛

市川崑「破戒」:島崎藤村の小説を映画化

市川崑「犬神家の一族」:横溝正史の推理小説を映画化

市川崑「細雪」:谷崎潤一郎の小説を映画化

市川崑「東京オリンピック」:東京五輪公式記録映画




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