壺齋散人の 映画探検
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野村芳太郎「わるいやつら」:松本清張の映画化



野村芳太郎の1980年の映画「わるいやつら」は、松本清張の同名の小説を映画化した作品。原作は、清張の作品の中では変わりだねで、清張得意の推理小説というよりは、悪党の活躍ぶりを描くピカレスク小説である。そのピカレスクな雰囲気をこの映画もよく出している。しかしそれだけのことで、大した印象を残すような映画ではない。悪党の存在がありふれた日本社会では、この映画に出てくるような悪党は、どこにでもみられるものであって、そんな悪党の活躍ぶりを見せられたからといって、感心する日本人はそうざらにはいないのではないか。

大きな病院を経営する医者が主人公である。この医者(片岡孝夫)は、父親から病院経営を受け継いだのだが、医業には関心をよせず、女遊びにうつつをぬかしている。その遊ぶ金まで女にたかろうとするような、どうしようもないやつである。そいつが、医者の権威を利用して、悪の限りを尽くす。しかし、こいつ一人が悪であるわけではない。こいつを取り囲む人間たちも、悪党ばかりなのだ。

というわけで、やるいやつらが繰り広げる人間模様がこの映画の見どころである。医者のさかてをとって、かれをくいものにする悪党たちが暗躍する中で、独り悪に染まっていないらしい女がいる。松坂慶子演じるその女は、医者が自分のために用立てた一億円という大金に手を出そうとはしない。その大金は、医者が父親から譲り受けた会計士(藤田まこと)によって騙し取られてしまうのだ。

結局この医者は、自分がカモにしようとしていた連中にカモにされたあげく、無期懲役の判決をうけるのである。なんともしまらない話である。




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