壺齋散人の 映画探検
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ハンガリーの映画:主要作品の解説と批評


ハンガリー映画が世界の映画市場で存在感を発揮するようになるのは21世紀に入ってからのことだ。2015年に「サウルの息子」がカンヌでグランプリをとると、ハンガリー映画の生んだ傑作だという評価が高まった。この映画は、アウシュヴィッツ=ビルケナウの強制収容所を舞台にして、ドイツの手先として同胞を殺害するガポと呼ばれるユダヤ人をテーマにしたものだ。非常にショッキングなテーマなので、すさまじい反響を呼んだ。しかし、これはハンガリーで起きたことではなく、ドイツ領内で起きたことだ。だから、それをなぜハンガリー人がことさら映画化するのかという疑問は多少あった。その疑問に対しては、いまや映画に国境はなく、とくにUE域内での国境の意義は薄れているので、人類にとって普遍的なテーマは、国境を無視して作られるべきだという意見が出されたりもした。

「サウルの息子」以前にも、ハンガリー映画は意欲的な作品を生んでいた。2011年の作品「ニーチェの馬」は、世界の終末をテーマにした黙示論的な意味合いを含んだ映画だったし、2014年の作品「ホワイトゴッド」は人間から虐待された犬たちが人間に復讐するという内容の映画だった。どちらも人間社会をトータルな視点から批判したものだ。

2017年の作品「心と体と」は、屠畜場という非日常的な空間を舞台に、男女の愛を描いたものだが、その愛がなぜか社会的な管理の対象になるといった、これもまた不気味な雰囲気の映画である。

以上、数は少ないながら、ハンガリー映画には、見る人をして深く考えさせるものが散見される。ここではそんなハンガリー映画について、主要な作品を取り上げて鑑賞しながら、適宜解説・批評を加えたい。


ハンガリー映画「ニーチェの馬」:世界の終末

ハンガリー映画「ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲」:動物虐待への逆襲

ハンガリー映画「サウルの息子」:強制収容所のガポを描く

ハンガリー映画「心と体と」:屠畜場を舞台にした男女の恋愛


ハンガリー映画「この世界に残されて」 ホロコーストを生き延びたものの心の傷




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