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ペドロ・アルモドバル「神経衰弱ギリギリの女たち」:男に捨てられた女たち



ペドロ・アルモドバルの1988年の映画「神経衰弱ギリギリの女たち(Mujeres al borde de un ataque de nervios)」は、男に捨てられた女たちの焦りと怒りをコメディ・タッチで描いたものだ。彼女たちは、焦りと怒りのために、神経衰弱になりそうなのだ。だがどこかにしぶといところがあって、ギリギリのところで踏ん張っている、というのがこの映画が描きだす女たちの姿なのである。

テレビ女優の中年女ペパは恋人イバンから捨てられることを直感する。旅行に出かけるから荷づくりしてくれと頼まれたからだ。他の女と旅行するに違いないと思ったペパは、イバンの同行者は昔の妻ルシアに違いないと思って彼女のもとに押しかける。ところがルシアのほうでも、ペパを疑っている。そんなペパのもとに、イバンとルシアの息子カルロスが恋人のマリサとともにやってくる。更にペパの女友だちカンデラも、助けを求めにやってくる。彼女は過激派を恋人に持ったおかげで、大変な目にあっているのだ。

そんな女たちが繰り広げる奇想天外な出来事がこの映画を彩る。それらの出来事としては、カンデラの自殺未遂だとか、マリサが睡眠薬入りのジュースを飲んで意識不明になることとか、また過激派を追いかけてやってきた刑事たちまでそのジュースを飲んで意識不明になってしまうとか、ルシアがオートバイをハイジャックして空港に駆け付け夫とその恋人を殺そうとすることとか、それを阻止しようと必死になるペパの活躍とかがある。それらの活躍ぶりがドタバタ風に展開されるので、観客は飽きることがない、という具合に作られている。とにかく単純に笑える映画である。

ペパを演じたカルメン・マウラは、「バチ当たり修道院の最期」の中では堕落尼を演じていた。なかなか渋い演技だったが、この映画では主役として、画面いっぱいに飛び回っている。



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