壺齋散人の 映画探検
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ペドロ・アルモドバルの映画:代表作の解説


ペドロ・アルモドバル(Pedro Almodóvar Caballero)は、スペイン映画を代表する映画作家である。スペイン映画は、フランコ政権のもとで長い間世界の水準から遅れた状態にあり、ルイス・ブニュエルなどは、フランスに活躍の舞台を求めた。ブニュエルは、スペイン人でありながら、フランス映画界の巨匠として知られたほどである。そのスペイン映画が、世界の水準に追いついたのは、フランコ政権が終わったあとの1970年台末近くになってからだ。ペドロ・アルモドバルは、その新しいスペイン映画を代表するような形で映画作りを始めたのである。

ペドロ・アルモドバルの映画監督としてのデビュー作は1980年の作品「Pepi, Luci, Bom y otras chicas del montón(ペピ、ルシ、ボムとその他の平凡な女の子たち)」である。これは日本未公開だが、1983年の「バチ当たり修道院の最期」は、日本でも公開され、世界中で話題となった。セクシー・コメディといった作品で、その後のアルモドバル映画の原点となるものだった。この映画に出演した女優カルメン・マウラは、その後のアルモドバル作品に多く出ている。

1988年の作品「神経衰弱ギリギリの女たち」も、「バチ当たり」と似たコメディタッチの映画。これは1987年に創設されたスペインの映画賞「ゴヤ賞」のグランプリをとった。「ゴヤ賞」は日本の「アカデミー賞」に相当するもので、スペイン映画の品質向上に貢献することになる。アルモドバルは、都合四回「ゴヤ賞」のグランプリをとった。

「神経衰弱」の後、しばらくセクシーなコメディ映画を作り続けたが、1999年の作品「オール・アバウト・マイ・マザー」は、一転してシリアスな作品である。息子を失った母親の悲しみを、ゲイの男性の生き方と重ねたこの映画は、アルモドバル自身の同性愛を表現したものでもある。この映画もゴヤ賞のグランプリをとった。

2002年の「トーク・トゥー・ハー」は、植物状態に陥った女性たちに真心を尽くす男たちを描き、2004年の「バッド・エデュケーション」は、少年がいかにして同性愛者になったかを描いたもので、アルモドバル自身の体験をもとにしていると言われる。

アルモドバルは、21世紀に入っても優れた映画を作り続け、スペイン映画の巨匠と呼ばれるようになった。彼の作品の重大な特徴として、画面作りへのこだわりがある。なにしろ色彩豊かで、しかも明るいのである。このように明るい映画を作り続けた監督は、ほかに見当たらないのではないか。ここではそんなペドロ・アルモドバルの代表的な作品を取りあげ、鑑賞しながら適宜解説・批評を加えたい。


ペドロ・アルモドバル「バチ当たり修道院の最期」:スペイン版駆け込み寺

ペドロ・アルモドバル「神経衰弱ギリギリの女たち」:男に捨てられた女たち


ペドロ・アルモドバル「キカ」:セックスと殺人

ペドロ・アルモドバル「オール・アバウト・マイ・マザー」:息子を失った母親

ペドロ・アルモドバル「トーク・トゥ・ハー」:植物状態になった女性たちとのコミュニケーション

ペドロ・アルモドバル「バッド・エデュケーション」:スペイン流衆道(ゲイ道)

ペドロ・アルモドバル「ボルベール」:帰郷をテーマ

ペドロ・アルモドバル「抱擁のかけら」:三角関係+α



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