壺齋散人の 映画探検
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テシス:アレハンドロ・アメナーバル



アレハンドロ・アメナーバルは21世紀のスペイン映画を代表する監督である。1995年に「テシス(Tesis)」でデビューした。23歳の時である。当時のスペイン映画界の観客動員記録を塗り替えるヒットだったそうだ。実際観客を楽しませてくれる映画だ。アメナーバルには、映画というものは芸術性ではなく興行性を重んじるべきだという持論があったようで、デビュー作のこの作品で、その持論を実践して見せたというわけだろう。

副題に「次に私が殺される」とあるように、ホラー映画である。ある殺人事件をめぐって、犯人を追及していた女性が、その犯人に危うく殺されそうになるところを描いている。犯人の候補には何人かあって、それらがどれも本物らしく見えるので、観客は最後の最後までハラハラさせられる。そこがただのホラー映画とは異なったところで、サスペンスがホラーを増幅させているのである。

主人公は映画学校に学ぶ若い女性アンヘラ。彼女は暴力をテーマにした論文を執筆中である。タイトルの「テシス」とはスペイン語で論文を意味するのだ。彼女はその論文に迫真性を持たせるために、実際の暴力シーンを見たいと思う。そこで指導教官にきわどい暴力を写したビデオを見せて欲しいと頼んだりする。その指導教官が突然死する。彼女に見せようと思った暴力ビデオを試聴している最中に、発作を起こして死んでしまうのだ。

彼女はその暴力ビデオを盗み出し、仲よくなった同窓生の男チェマとともに見る。するとそこにはある女性の生々しい殺害シーンが映されていた。チェマはその女性が二年前に行方不明になった同窓生のバネッサだと見抜く。彼女はなにものかによって殺されていたわけだ。このビデオはその殺害現場を捉えたものだが、巧妙に編集されていて、犯人がわからないようになっている。そこでチェマとアンヘラは、少ない手がかりを頼りに犯人捜しにとりかかるのだ。

彼らの周囲には怪しい人間が出て来る。アンヘラの指導教官の後任カストロとか、学校の同窓生ボスコなどだ。アンヘラはチェマを含めた彼女を取り巻く男たちを、みな疑う。バスコに対しては、疑う気持ちと心を惹かれる気持ちが相半ばする。そのうちカストロが牙をむき、アンヘラを殺しにかかる。そこをチェマに助けられる。それでもアンヘラはチェマへの疑いが晴れない。

次にボスコが牙をむく。ところがボスコは巧妙で、チェマが犯人だとアンヘラに思わせたりする。油断したアンヘラにボスコが襲い掛かったところを、チェマが助けて、ついに事件の全容があきらかにされる。という具合に、かなり込み入った筋書きになっているのである。

その筋書きの巧妙さが、この映画が受けた理由だろう。頭の体操をさせられているようで、始終緊張を強いられる映画である。




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