壺齋散人の 映画探検
HOMEブログ本館美術批評東京を描く水彩画動物写真西洋哲学 プロフィール掲示板


オーソン・ウェルズ「上海から来た女」 リタ・ヘイワースの魅力



オーソン・ウェルズの1947年の映画「上海から来た女 The Lady from Shanghai」は、奇才といわれたウェルズにしては、ちょっとしまらない印象を与える作品である。一応、サスペンスの形をとっているが、ミステリーの設定が不自然であり、また男女の痴情がからむことで、サスペンスとしては冗漫な印象を避けられない。だいたい、タイトルにある上海は、映画の中ではほとんど意味をもっておらず、主演女優リタ・ヘイワースにエキゾチックな雰囲気を付与するためのサル知恵のように思える。ウェルズともあろうものが、お粗末というほかはない。

オーソン・ウェルズ演じるマッチョな男が、グラマーな女に一目ぼれし、しかも夢中になってしまったために、頭の中が空っぽになってしまい、一人前の人間としてふるまうことができず、ずるずると泥沼にはまるように、転落していく過程を描いている。リタ・ヘイワース演じるその女が、この映画の最大の見どころであり、この映画は、彼女の魅力を広くアピールするために作られたプロパガンダ映画だといってといほどである。

リタ・ヘイワースは、ハリウッドの生んだ最初の本格的なセックス・シンボルといわれた女優で、マリリン・モンローがあらわれるまでは、セックス・シンボルとしての名声を独占していた。この映画に出たころは、人気の絶頂を極めており、ウェルズ自身も彼女のセクシーな魅力のとりこになったくらいである。この映画の中のウェルズは、色ボケした間抜けのような表情をしているが、それはリタの魅力に取りつかれて、頭がいかれていたからであろう。

筋書きには大した意味はない。ウェルズ自身が犯人として裁かれる殺人事件の真犯人が、実はリタ・ヘイワース演じる女だったというような内容である。無実の自分を結果的に殺人犯にしたてたのであるから、彼女は悪女というべきなのだが、なぜか悪女には思えないように作られている。リタに惚れていたウェルズとしては、彼女を悪女にするわけにはいかなかったのであろう。




HOMEアメリカ映画オーソン・ウェルズ次へ









作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2013-2021
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである