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山本薩夫「氷点」:継母の継子いじめ



山本薩夫の1966年の映画「氷点」は、三浦綾子の同名の小悦を映画化した作品。原作は朝日新聞に連載され、大きな反響を呼んだ。山本による映画化のほか、テレビドラマとして繰り返し取り上げられており、海外でもリメークされている。テーマが、継母による継子いじめというわかりやすく、しかも普遍的なものだからであろう。

継母による継子いじめに、その継母の不倫とか、継母とその夫との不和、そして継子への兄の恋情などがからんで、複雑な人間模様が展開される。だが、テーマが深刻な割には、掘り下げた分析がみられず、描かれた人間関係も平板にうつる。

タイトルの「氷点」とは、心が凍えてこわれてしまう限界点(あるいは閾値)をさす。この映画の中の親子関係は、子供の心を凍えさすほど冷たいのである。その冷酷さの象徴のような継母を若尾文子が演じている。若尾としては、芸域の幅がひろがったというより、自分のイメージがそこなわれたといってよいのではないか。というのは、この映画の中の若尾は、悪女に徹しておらず、中途半端な印象を与えるからである。




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