壺齋散人の 映画探検
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グエムル-漢江の怪物:ポン・ジュノ




ポン・ジュノの2006年の映画「グエムル-漢江の怪物」は、韓国版ゴジラといった作品だ。ゴジラの場合には、水爆実験の結果怪物が生まれ、それが人類に対して科学利用への反省をせまったものだが、この映画の場合には、化学物質による汚染で怪物が生まれ、それが人類に破壊的な攻撃を加えるというものだ。水爆実験はアメリカがやったことだったが、この映画の中でソウルの河川漢江を科学物質で汚染するのは在韓米軍ということになっている。ポン・ジュノには、在韓米軍に対する反感があるようだ。

在韓米軍に対する反感と並んで、この映画では同時代の韓国社会に対する痛烈な批判が込められている。怪物に襲われた少女を助けるために、残された一家四人が協力して活躍するのであるが、それに対して、警察も軍も行政も、彼らに助力するどころか、抑圧しにかかるのである。だからかれらは自力で少女を救助しなければならない。そのために、一家の父親(少女の祖父)は怪物との戦いに敗れて死んでしまうし、少女もむなしく息を引き取ってしまうのだ。

権力が一家を抑圧する理由は、一家のメンバーが、怪物由来の強烈なウィルスによって汚染されているからということになっている。だがこれは根拠のないことで、実際には、米軍への遠慮があったというふうに伝わって来る。そもそも怪物発生の原因となった化学物質を漢江にばらまいたのは在韓米軍の研究者だったのだ。その理由は明示されていないが、おそらく科学兵器研究の一環だったのだろう。その科学物質というのが、ホルムアルデヒドということになっている。ホルムアルデヒドは、たしかに毒性の強い物質だが、怪物が突然変異で発生するようなものではない。だから設定が甘いわけだが、映画はコメディ・タッチで作られているので、それくらいのミスマッチは愛嬌の領域に納まるということだろう。

その怪物というのが、ゴジラとくらべていかにも迫力がない。ゴジラは恐竜をイメージしていたが、この映画の怪物は、オオサンショウウオに多数の足をつけたようなイメージで、人類を破滅の追い込むような迫力は感じさせない。しかもこの怪物は、家族の捨て身の攻撃によって、退治されてしまうのである。人間に退治されるくらいだから、その実力のほどはたかが知れている。この怪物を「グエムル」というのだが、グエムルとは「怪物」という漢字をハングル流に音読みしたもので、日本語の「カイブツ」に相当するという。「カイ」が「グエ」、「ブツ」が「ムル」に相当するということらしい。

ペ・ドゥナが家族の一員として出て来る。彼女は、是枝裕和の「空気人形」に出演して、人形のような表情が印象的だったが、やはりポン・ジュノの「ほえる犬は噛まない」では冴えない事務員を演じ、この映画では洋弓の選手を演じている。よく動く大きな目が印象的だ。




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