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男はつらいよ寅次郎紙風船:寅さんシリーズ第二十八作



「男はつらいよ寅次郎紙風船」は、寅さんシリーズ第二十八作、公開は1981年暮。テキや仲間から、自分が死んだあと女房の再婚相手となってくれと頼まれた寅次郎が、一度はその気になるものの、いざその女房から意思の確認を迫られると、例のとおり尻込みし、折角のチャンスを台無しにするという内容。それに、旅先で知り合い、仲良くなった小娘との、温情あふれるやりとりが絡む。一応、音無美紀子演じるやくざの女房がマドンナという位置づけだが、彼女とのかかわりは必要最小限にとどまり、大部分は岸本加代子演じる小娘とのやりとりに費やされている。

その小娘と知り合ったのは、九州のうらさびれた旅館の中。娘はほかに行き場所がなくて、寅次郎と相部屋することになるのだが、二人はすぐに意気投合。娘は寅次郎を親のように慕って、どこまでもついてくるようになる。

一方、やくざの女房とは、さる祭りの場で言葉を交わしたあと、秋月にあるやくざの家で再会する。そのさいにやくざは、自分の死後に女房と再婚してくれと寅次郎に頼み、寅次郎はそれを了解する。その直後にやくざは死に、死に際に女房にむかって寅次郎との約束を話す。それを聞いた女房が、柴又まで寅次郎を訪ねてきて、自分と一緒になるつもりがあるのかと、念を押すのである。それに対して寅次郎は、まともに答えることができない。いつものように照れながら、あれは冗談だよといってごまかす。本当は、その女房と一緒になりたいのだ。そのために心を入れ替え、堅気の仕事をする気にもなっていたのだ。

一方、小娘のほうは、マグロ漁師の兄が、柴又までやってきて、こんこんと妹を説教したうえで、焼津の家へ連れて帰る。そんな小娘を寅次郎は、親心から心配し、焼津まで様子を見に行くというわけである。

こんな具合に、二人の女と寅次郎とのかかわりを描いたものだ。音無美紀子は、決して美人ではなく、マドンナという柄でもないが、寅次郎の心をつかんだことに間違いはなさそうである。岸本加代子は蓮っ葉だが情の深い少女をよく演じている。


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