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男はつらいよ寅次郎真実一路:寅さんシリーズ第三十四作



「男はつらいよ寅次郎真実一路」は、寅さんシリーズ第三十四作、公開は1984年暮。寅次郎が人妻に恋心を抱くが、所詮許されない恋とあきらめる、というような内容。人妻との恋というのがこの映画の売りだが、その人妻は夫を深く愛しており、寅次郎の恋心は横恋慕に過ぎない、という悲しい設定の作品である。

どこかの飲み屋で偶然知り合った男(米倉斉加年)と仲良くなり、そのうち牛久にある男の家に転がり込んだはいいが、その男がそれ以来蒸発して姿を隠してしまう。そこで寅次郎は、男の妻(太原麗子」と一緒に男の行方を追って、鹿児島まで出かけて行く。しかし簡単には見つからず意気消沈しているところに、男がひょっこり柴又に現れる。いろいろ反省した男は、心機一転してやり直すといい、男の家族はなんとか持続できるようになったが、燃え上がった寅次郎の恋心は、行き場がないのであった。

物語設定が、他の作品とは異なるユニークさを感じさせるが、あまり迫力を感じさせないのは、寅次郎が年をとって、そろそろ熱い恋心とは無縁になりつつあるからだろう。太原麗子のほうも、人妻としての堅実さをただよわせ、色気がないわけではないが、いまさら恋愛沙汰という雰囲気とは遠い。

寅次郎と太原が飛行機に乗って鹿児島に向かうのだが、その飛行機というのが、「東亜国内航空」であるところに、時代を感じさせられる。東亜国内航空は、一時は第三の航空大手として威勢がよかったものだが、この映画が作られてしばらくのちに、ブランドとしては消滅した。


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