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男はつらいよ知床慕情:寅さんシリーズ第三十八作



「男はつらいよ知床慕情」は寅さんシリーズ第三十八作、公開は1987年夏。おいちゃんたちと深刻な喧嘩をして反省の旅に出た寅次郎が、北海道の知床で風変わりな獣医(三船敏郎」と仲良くなる。その獣医には、かれの身の回りを気づかう女(淡路恵子)がいた。その女はバーのマダムをしているのだが、獣医はじつは彼女に惚れている。

そんな獣医のもとに、東京で結婚に失敗した娘(竹下景子)が出戻ってくる。獣医は、つまらん男に引っかかったからだと言って娘をせめる。寅次郎はその間に入って、なんとか父娘の仲を取り持とうとする。一方、獣医とマダムとの関係にも気を遣う。

といった具合で、この映画は寅次郎の人の好さを前面に押し出した作品だ。寅次郎の人のよさは、知床に生きる人々に強く愛されることにあらわれている。とにかく不思議な魅力を持っているのだ。

三船の演技が最大の見どころだろう。マダムに惚れていながら、その気持ちを素直に言えない。そのマダムが知床を去ってほかの土地に行くという段になって、はじめて、行ってはいかん、おれが御前に惚れているからだと叫ぶ。そう叫ばしたのは寅次郎なのだ。だからこの映画の中の寅次郎は縁結びの福の神の役割を果たしている。その一方で、自分自身の恋の始末をつけられないのは、いつもながらのことだ。そろそろ寅次郎は、恋をするような年ではなくなりつつあるのだ。

竹下景子は、第三十二作「口笛を吹く寅次郎」でも、お寺の住職の娘役で出ていたが、この映画の中では、全く異なったキャラクターを演じている。髪を短くボーイッシュにカットしてるところがなかなかよい。


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