壺齋散人の 映画探検
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ルキノ・ヴィスコンティの映画:作品の解説と批評


ルキノ・ヴィスコンティ(Luchino Visconti)は、ヴィットリオ・デ・シーカやロベルト・ロッセリーニと並んで戦後イタリア映画を代表する作家だが、所謂ネオ・レアリズモとは一風変わった映画を作った。本人は、自分もネオ・レアリズモから出発したといっているが、処女作の「郵便配達は二度ベルを鳴らす」は、どう見てもネオ・レアリズモとは言えない。ただし、二作目の「揺れる大地」は、資本に搾取される漁民の生活を描いており、ネオ・レアリズモ的な雰囲気は感じられる。


だが、ルキノ・ヴィスコンティの神髄は、ネオ・レアリズモのように庶民と社会との葛藤を描くことよりも、人間同士の葛藤を描くことにあったと思われる。彼の作品の多くが、有名な小説を原作としていることにも、それは現れている。「白夜」、「異邦人」、「ヴェニスに死す 」といった作品は、いずれも高名な作家の小説を原作としており、人間同士の微妙な関係を気も細やかに描いていることで知られている。

人間関係という点では、ヴィスコンティは家族を考えさせるような映画も作っている。「ベリッシマ」は親子の情愛を描いたものだし、「若者のすべて」は兄弟愛を描いている。「家族の肖像」は本物の家族を描いたものではないが、老人の家族へのあこがれがテーマだ。こうした家族への視線には、ネオ・レアリズモとの共通性を指摘できよう。

一方、近親相姦をテーマとした「熊座の淡き星影」や同性愛をテーマにした「ヴェニスに死す」など、ヴィスコンティには、いわゆる変態性愛への傾向がみられる。同性愛は、いまでは変態とは呼ばれないが、近親相姦はあいかわらずタブーである。そのタブーをあえて犯すような大胆さがヴィスコンティにはある。

性的な大胆さは、「夏の嵐」や「イノセント」にも観られる。どちらもイタリア女の性的奔放さを描いた作品で、遺作となった「イノセント」は、夫にかまってもらえず欲求不満になった女性の性欲を濃密な雰囲気で描き上げている。

後期に手がけた文芸映画のうち、「異邦人」はアルベール・カミュの有名な小説をテーマにしたもので、フランス人のクレオール(植民地で生まれ育った人間)の孤独を描いたものだ。イタリアはフランスのような植民地を持つことはなかったが、イタリア人にも、クレオールの孤独さがわかるのかもしれない。

なお、彼の姓であるヴィスコンティとは、イタリア語で子爵を意味する。彼は実際に貴族の出自なのである。その彼が、一時共産主義者になって社会正義にこだわったり、家族の愛にこだわったりしたのは、面白いことだ。かれは自分の貴族趣味を露骨に表現してはいないが、バイエルン王ルードヴィッヒを描いた「ルードヴィヒ」には、貴族趣味への傾向を指摘できるかもしれない。

ここではそんなルキノ・ヴィスコンティの代表作品を取り上げ、鑑賞しながら適宜解説・批評を加えたい。



郵便配達は二度ベルを鳴らす(Ossessione)  不倫の愛が夫殺しに発展する

揺れる大地(La terra trema) 漁民と漁業資本との対立を描く

ベリッシマ(Bellissima) 幼い娘に夢を託した母親

夏の嵐(Senso)  オーストリア軍将校とイタリア貴族夫人との不倫の愛

白夜:ルキノ・ヴィスコンティ  ドストエフスキーの小説を映画化

若者のすべて:ルキノ・ヴィスコンティ  イタリアの貧しい家庭の兄弟の絆を描く

熊座の淡き星影:ルキノ・ヴィスコンティ  姉と弟の近親相姦

異邦人:ルキノ・ヴィスコンティ  カミュの小説の映画化

地獄に堕ちた勇者ども:ルキノ・ヴィスコンティ  ナチス台頭期における権力争い

ヴェニスに死す(Morte a Venezia)  トーマス・マンの小説を映画化

ルードヴィヒ:ルキノ・ヴィスコンティ  バイエルン王ルードヴィヒの数奇な生涯

家族の肖像:ルキノ・ヴィスコンティ  老紳士の家族へのあこがれを描く

イノセント:ルキノ・ヴィスコンティ  欲求不満の妻の不倫を描く


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