壺齋散人の 映画探検
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中東の映画:作品の解説と批評


中東といえば、パレスチナをめぐるイスラエルとアラブ世界との対立がもっとも大きな問題だ。この対立は、パレスチナにユダヤ人がやってきて、ついにイスラエル国家を建設したことに始まる。イスラエル国家の建設は第二次世界大戦後の1948年だが、ユダヤ人は20世紀の初頭からパレスチナにやってきた。その移入の流れを支えたのは、ヨーロッパのユダヤ人の間で盛んになったシオニズム運動だった。

イスラエル国家の建国は、イスラエルとアラブ諸国との対立を先鋭化させ、四度にわたる大きな戦争をひきおこした。最初の戦争はイスラエル建国に伴うものだが、その戦争にユダヤ人は圧勝して、イスラエル国家の基礎を固めた。それにともない、従来パレスチナに住んでいた大勢のアラブ人が難民となった。

1968年の第三次中東戦争は、イスラエルの大勝利に終わり、ヨルダン川西岸やガザ地区もイスラエルの支配下になった。それにともない、そこに住んでいたアラブ人も難民化した。

アラブ諸国は、最初は一致してイスラエルに対抗していたが、度重なる敗北を経て、次第にパレスチナ問題にかかわることをやめるようになった。そこでイスラエルによるパレスチナ人への迫害がひどくなっていった。いまや、イスラエルは占領地区を併合する動きを露骨にみせている。それに対して、国際社会はほとんどなにもしないでいる。そんななかでパレスチナ人は絶望の度合いを深めている。

中東問題については、映画がこれを正面から取りあげることは、ほとんどなかったのであるが、21世紀に入ると、まずパレスチナ人の立場から、イスラエルの迫害を糾弾するような映画が作られるようになった。「オマールの壁」とか「パラダイス・ナウ」は、パレスチナ人によるイスラエル批判の作品である。また、「クロエの祈り」のように、ヨーロッパの視点からパレスチナ人の境遇に同情するような作品も作られた。

一方、イスラエルの立場から、中東問題を取りあげた作品も現われた。「レバノン」はイスラエルによるレバノン侵攻をテーマにしたものだし、「ミュンヘン」はミュンヘンオリンピックにおけるパレスチナ人によるテロへのイスラエルの報復をテーマにしたものだ。どちらもイスラエルの行動を正当化しているのは、ユダヤ人としての立場からはやむをえないものがあるが、しかし手放しでイスラエルを讃えているわけではない。

ここではそんな中東問題に関係する映画作品を取りあげて、その今日的な意義について考えてみたい。


パレスチナ映画「オマールの壁」:分離壁を隔てたパレスチナパレスチナ人同士の交流

ハニ・アブ・アサド「パラダイス・ナウ」:パレスチナ人の自爆攻撃


クロエの祈り:パレスチナに同情的なカナダ人女性

パレスチナ映画「ガザの美容室」:ガザに生きる人々


イスラエル映画「レバノン」:イスラエルのレバノン侵攻を描く

スティーヴン・スピルバーグ「ミュンヘン」:黒い九月へのイスラエルの報復ス

イスラエル映画「約束の旅路」:エチオピアのユダヤ人

イスラエル映画「シリアの花嫁」:ゴラン高原を超えた愛

イスラエル映画「キプールの記憶」:第四次中東戦争の一齣

イスラエル映画「ケドマ 戦禍の起源」:イスラエル建国の一齣

アモス・ギタイ「フリー・ゾーン 明日が見える場所」:ユダヤ人とアラブ人の関係

アモス・ギタイ「撤退」:ユダヤ人のガザ撤退

アモス・ギタイ「幻の薔薇」:第二次大戦後のフランス人の生き方タイ


レバノン映画「判決、ふたつの希望」:レバノンにおけるパレスチナ問題


サウジアラビア映画「少女は自転車にのって」:タブーに挑戦する少女



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