壺齋散人の 映画探検
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スウェーデン映画:名作の解説と批評


スウェーデン映画といえば、イングマール・ベルイマンの存在感が圧倒的である。じっさいスウェーデン映画を世界に注目させたのはベルイマンだった。かれは1940年代から映画作りを始めたので、スウェーデン映画の開拓者といってよかった。北欧の人間らしく、信仰とか神秘主義とかに深い関心を寄せており、それが映画にも反映している。日本では「野いちご」がもっともよく知られた作品であるが、これも死の問題をテーマにしたものだ。

ビレ・アウグストは、ベルイマンより一世代後の作家で、1980年代以降活躍した。代表作の「ペレ」は、デンマークに出稼ぎにいった労働者をモチーフにしたもの。こういう映画を見ると、スウェーデンはヨーロッパでは遅れた貧困国だったことを気づかされる。「愛の風景」は、ベルイマンの伝記を映画化したもので、かれのベルイマンへのオマージュを感じさせる。

スウェーデン映画の新しい世代を代表する作家としては、ロイ・アンダーソンがあげられる。1970年に「スウェーディッシュ・ラブ・ストーリ」でデビューし、世界的な評判をとった。だが第二作目が興行的に失敗してしばらく映画作りを控えていた。2000年に「散歩する惑星」を作り、以来たてつづけに作った。アンダーソンはベルイマンとは違い、無神論的な傾向の強い、反道徳的とも受け取られかねない不条理映画が得意である。「散歩する惑星」はキリストへの侮辱を、「さよなら人類」は人類全体への痛烈な批判である。

スウェーデンといえば、高度な福祉社会を連想させるが、近年はかなりな格差社会に変わってきているようである。リューベン・オストルンドの「ザ・スクエア」は、そうした新たな格差社会の問題をテーマにしたものである。この映画を見ると、グローバリゼーションの流れが、スウェーデンのような国にも格差と貧困をもたらすということを、あらためて理解するよすがとなる。

スウェーデン映画は、日本にはあまり紹介されていないのだが、ベルイマンやアンダーソン以外にも優れた映画作家がいるそうである。今後、日本でも是非多く紹介されることを望みたい。

そんなスウェーデン映画の代表的で容易に入手できる作品を取り上げ、鑑賞の上適宜解説・批評を加えたい。


ビレ・アウグスト「ペレ」:デンマークのスウェーデン人労働者

ビレ・アウグスト「愛の風景」:ベルイマンの伝記


ロイ・アンダーソン「散歩する惑星」:キリストを侮辱する

愛おしき隣人:ロイ・アンダーソンの映画

ロイ・アンダーソン「さよなら、人類」:人類への批判

ロイ・アンダーソン「ホモ・サピエンスの涙」:人間を超越論的視点から描く

リューベン・オストルンド「ザ・スクエア 思いやりの聖域」:現代スウェーデン社会の矛盾

スウェーデン映画「幸せなひとりぼっち」:生きる気力


イングマール・ベルイマン


イングマール・ベルイマン「不良少女モニカ」:神を恐れぬ奔放な生き方

イングマール・ベルイマン「夏の夜は三たび微笑む」:恋愛ゲーム


イングマール・ベルイマン「第七の封印」:ヨハネの黙示録

イングマール・ベルイマン「野いちご」:老いと死を描く

イングマール・ベルイマン「魔術師」:権力に迫害される魔術一座

イングマール・ベルイマン「処女の泉」:娘のための復讐

イングマール・ベルイマン「冬の光」:神の沈黙三部作

イングマール・ベルイマン「沈黙」:神の沈黙三部作

イングマール・ベルイマン「仮面 / ペルソナ」:仮面の葛藤

イングマール・ベルイマン「恥」:内戦に翻弄される人々

イングマール・ベルイマン「叫びとささやき」:生きることの罪深さ

イングマール・ベルイマン「秋のソナタ」:母娘間の葛藤を描く

イングマール・ベルイマン「ファニーとアレクサンデル」:虐待される連れ子たち



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